知的財産講座 その2「特許法」

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Last Updated on 2019-07-29 by matsuyama


弁理士の松山裕一郎です。梅雨も明けていよいよ夏本番です。今年も厳しい暑さの続く夏になりそうですね。暑さとほどほどに折り合いをつけつつ、季節の楽しみを満喫できればと思うこの頃です。

さて、知的財産講座の第2回です。
夏バテ防止のためにも、今回から短く区切ってお伝えしていきます!何かの合間にも、さくさくと読んでいただけら嬉しいです。
第1回をまだ読んでない方は、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね。

第1回までで各知的財産法についてざっくりと、どんなものがあるのかということまでをお伝えしました。つづいては各法律をもう少し掘り下げるフェーズに入っていきたいと思います。今回は「特許法」にフォーカスを当てて、ご紹介していきますね。

(余談ですが、特許法をはじめとした知財のエキスパートが集まる日本弁理士会には「はっぴょん」というかわいらしいキャラクターがいます。ちょっと三次元に登場するには難しい姿をしていますが、ゆるキャラという言葉が浸透する前から活躍している頑張り屋さんです。なんとゆるキャラグランプリにもエントリーしている様子!)

話を戻して、本題に入っていきます。

「特許法」について知るためにはまず、その法律がカバーする範囲がどういったものであるか、すなわち、


・その法律が何を「目的」としていて、目的達成のための「手段」をどのように設定しているのか


というポイントを押さえておくとよいと思います。これはもちろん特許法だけではなく、どの法律にも言えることになります。

各法律の条文を実際にチェックしてみるとわかりやすいのですが、ほとんどの法律が1条に法律が作られた「目的」とその達成のための「手段」が書かれています。
(〇〇をすることによって、最終的に△△を実現するためのルールを書いておきますよ、この手段をとるものはこの法律をチェックしてね、という具合です。)


特許法が目指しているものとは(目的)

特許法において、定められた大きな目的はずばり国の「産業の発達」です。
優れた技術、発明品によって、日本産業を発達させていくことが、特許法が作られた最大の目的なのです。産業を発達させたいわけなのですが、そのためには技術や発明品を時にはむやみに利用されてしまうことから守ったり、逆に新しいひらめきのヒントとして共有してみたりと、いろいろなアプローチが必要になってきます。そこでこの特許法で、ひとつ明文化してその手段も決めているのです。

特許法が目的達成のためにとる手段とは

さて、「産業の発達」という大目的を達成するために採用している手段は、
「発明の保護と利用」というところになります。


「発明の保護」は、特許権の付与によって行われます。これはわかりやすいですね。特許権という非常に強い権利を付与することにより発明を保護しています。


一方、「発明の利用」は、更に2つの作用に分解されます。
発明の実施公開です。
発明の実施とは、いわゆる発明を使用すること、更には発明品を作って売ることが該当します。正確には発明のカテゴリーによっても変わりますが、ここでは、その程度で理解してください。

わかりにくいのは発明の公開です。発明を公開するのですから、公にするということです。国という公権力が、発明という非常にプライベートなアイディアを公衆に知らしめるのです。これと産業の発達とにどんな関係があるのかよくわからないところです。ここに特許法におけるメカニズムが潜んでいます。

発明を公開するということは、新しいアイディアを多くの人々の面前におき、だれもが知ることができる状態にするということです。
そうすると、この新しいアイディアを見て色々考える人が出てきます。更に新しいアイディアを考えつく種をまくことができるわけですね。
こうしてアイディアがアイディアを呼び、技術が発展していきます。これを技術の累積的進歩といいます。
この技術の累積的進歩により、我が国の産業が発展するというのが特許法のメカニズムになります。こうして目的達成をしようということですね。


ところで、最近ではインターネットの発達により、上記のようなやり方での我が国産業の発達というメカニズムは薄れているのではないか?という議論もあります。どこの国の人でも日本人と同時に新しい発明を確認できるし、翻訳も理解する程度であれば瞬時に行えるので、我が国の産業のためとは言えないのではないかという問題意識です。これは妥当な面が十分にあると思います。そろそろこのメカニズムの解釈も再構築する必要があるのではないでしょうか?
今はグローバル且つボーダレスに企業が活動する時代です。世界中の情報を国境を越えて共有することで、世界的に産業が発達し、その結果として我が国の産業も発達する、という形もあるのかもしれません。

次回も各知的財産法を詳しく掘り下げる回をお送りしていきます!



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