「それってパクリじゃないですか?」第6回 解説

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Last Updated on 2023-05-18 by matsuyama

※以下、ネタバレを含みますので「それってパクリじゃないですか?」第6回をご覧でない方はドラマ観覧後にお読みいただくことをおすすめします。

弁理士が登場する知財のドラマ!日本テレビ系列で「それってパクリじゃないですか?」第6回、いかがでしたか?

恋の行方も気になる展開!

やたら難しい特許の話に一服の清涼剤、にゃんこ‼

何か中毒性のあるドラマになりつつありますかね?

今回は大学との共同研究成果についての発表か特許出願か、という葛藤を軸に話が進んでいました。

昔の大学の先生には「わしの研究は特許なんてとらん。大学の研究は金儲けのためにあるのではない。みんなに使ってもらうのじゃ」なんてことを言う人がいました。

でも最近ではほとんどいませんね、そんな人。

研究資金獲得のために企業と共同研究することが普通になり、企業は成果を特許の形にすることで資金回収しようとします。

だから慣れたのでしょうかね?

でも、上記のロジック、実は間違いなのわかりますか?

研究者は、特許をとらないとしても発表はしますよね?

で、この発表はあくまで研究分野のもので実用的でないことがほとんどです。

と言うことはその発表を見た人が、実用的なものに仕上げて商品を作り、特許をとることができます。

要は、「みんなに使ってもらう」つもりで公表しても、結局誰かに独占権をとられてしまい、「みんなが使えない」状況を作ってしまうのです。

これを回避するためには、自ら特許を取得して、その特許を開放するべきなのです。そうすればみんなが使える状態になりますね。

さらに言うと、みんなお金にならないことはやらないです。だって、みなさん生活が成り立たなければ社会貢献もなにもあったものではないですよね?

技術でお金を作るには、独占的に商品を売るということは非常に優位です。

技術を特許という形にすることで、経済的な利点を与えて結果みんなが使うように仕向けることができるのですね。

さて、本日の解説ポイントや誤解しないでポイントについて説明しましょう。

<解説ポイント① 発明は完成しないと特許出願できない?>

ドラマでは「特許出願するにはデータ(効果を裏付ける?)が不足しているから、効果を立証できていない。よって、そのデータが揃って出願できるまで発表を控えろ!」と言う話が軸になっていました。

これを受けて、女性主人公は、なんとか発表用の原稿を学会に送るまで(送ると公表されちゃう)に特許出願できないか、と奮闘するわけです。

まあ、この話を聞くと、既に発明は完成していると言えます。だって、「うまい」とか「やばい」とか「シュワワワ」なんて商品の評価は上がっていて、単にそれを客観的に理解できる数値化ができていないだけですから。

と、言うことは、ですよ、発明が完成しているとはいえるので、もう出願すればいいんですよ。

だって、美味しい飲料ができているのですから。

発明の構成「こういう組成の飲料です。」

効果「美味しいです。」

ね、完成しているでしょ!?

実はドラマの情報からは、既に発明は完成しているので、なんら問題なく出願できたのです。

いやいや、美味しいじゃダメだろ!と思ったあなた。

その感覚正しいかもしれません。

だから、後で出てくる官能試験なんてものがあるのですが、それは後述するとして、データは後で追加すればいいんです。

え?補正でデータの追加はNGって言ってたよね?と思ったあなた!さすがです。

そう、補正はダメですが、出願から1年以内なら優先権制度(ここでは国内優先権制度)を使ってデータを補充することができます

優先権制度をうまく活用すれば、発明が一応完成しているけど、実施例が貧弱だし、効果の確認データがまだそろってないんだよ」なんてときにとりあえず現段階で出願しておき、1年以内にデータを補充して、出願を補強することができます

機会損失はほんとに大損失につながりますから、気を見るに敏、ですね。

<解説ポイント② ノウハウは秘匿するべき?>

ドラマでは、男性主人公が、今後の主力商品について「特許は取りません。ノウハウとして秘匿します。だって、この技術は他社が簡単に再現できるものではないですからね」と言っていました。

確かに、ドラマでも言っていたケンタッキー・フライド・チキンやコカ・コーラの事例は、ノウハウを秘匿してだれもまねできない味をビジネスにしているケースです。

特に食品業界や微妙なすり合わせが必要な製造方法においては、ノウハウで秘匿することは有効です。

否定しません。

でも、ノウハウだけで守ることには否定的です

多分、現状、ノウハウで保護できそうだと思うのは、「味」くらいなもので、自分の思いつくものは他人も思いつくと思った方がいいです。

味は繊細なものですから、なかなか再現できないのは道理ですし、必ずしもコカ・コーラの味が再現できなくてもペプシのようにペプシの味で勝負できたりします。

要は、完全に同じ味にしなければならない必然性がないのです、味には。

そこで、提案したい、というか、声を大にして言いたい。

「ノウハウか特許か」ではなく「ノウハウも特許も」

「諸君!欲張りたまえ」

私のノウハウまでは書きませんが、発明は機能で切り分けて考えるべきもの、という話を以前書きました。

これを実践すればいいのです。

味にもいろんなカテゴリーがあります。

一つの商品でも切り分ければ色々と分けられます。

例えば、「苦みと甘みの両立」「抑えられた酸味」などなど。

それぞれを達成しているものを発明の構成として、酸味については特許出願、苦みと甘みについてはノウハウ、という感じにすれば、一つの商品を、特許で守り、ノウハウでも守る、ことになります

フフン!

<誤解しないで 評価はいろいろ>

ドラマでは、さんざん試飲しておいて、発明の効果を立証するデータがないとみんながわめいているのに、最後の最後になって「そうだ、官能試験しよう」なんてことを言っていました。

飲料メーカーなら常日頃官能試験しとろうが、と思いますけどね。

でも、こんな人の感覚でもって発明の評価を行ってもいいの?特許になるの?

そう思いますか?

そうです。特許になるんです。

だって、味とか匂いとか音とか光とか触り心地とか、人の五感に問いかける商品ですよ?

もう、人の五感で判断して評価するしかないじゃないですか。

道理です。

ドラマですから、最後に気付いてみんなで協力して成果を出すのが感動的なのであんな構成になっていますけど、本当は最初からやっていることでしょうね。

飲料メーカーなら。

官能試験でもいいですけど、最近はいろんなセンサーがありますからね。

ちゃんと機械で測れるものも増えて来ました。

でも評価はそれこそ人それぞれの評価軸がありますから。

どんな評価手法を用いてもいいのです。

キチンと再現可能にその評価手法を説明していさえすれば。

ちなみに、こんなにデータデータと言うのは、化学系の特徴です。

機械分野やIT分野はデータがなくても大丈夫なものが多いです。

発明の構成を見ればどんな効果が得られるのかわかるからです。

例えば「六角形の鉛筆」を見れば、「転がらない」という効果は分かりますよね。データがなくても、説明さえしてあれば。

そういうことです。

ちなみに、ドラマでは専門パネラーをたくさん呼んで厳密な試験を行っていました。

そうですね。こういうふうに厳密にするべきなのでしょうね。

ではでは

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