Last Updated on 2013-04-04 by matsuyama
クレームは広い方がいいという神話めいた言葉があります。
確かに、広い範囲で権利化できればそれに越したことはないでしょう。
しかし、具体的な実施態様もないのに理屈上考えられるからと言ってクレームの範囲に入れてしまうのは自分の首を絞めてしまいます。
化学分野では顕著です。たとえば、以下のようなケースです。
出願a:クレーム「置換基としてAを用いうる旨記載」
実施例「Aについては記載なし」
出願b:出願a公開後の出願
クレーム「Aを置換基として有する」
実施例「置換基がAのものを記載」
上記ケースでは出願bは出願aを引例として29条2項(または1項3号)で拒絶されます。
しかも出願aでも置換基としてAを有するものについては36条の問題があるため権利化できません(権利化できても無効理由を含むことになります)。
えっ、そんなことあるの?と思われる方もあるかも知れませんが、化学分野では多いです。出願が多くなると訳わからなくなるのでしょうかね?
機械分野でも、たまにクレームに記載した態様を実施例で書いていない明細書を見ます。昔の1発明のときの考え方から抜け切れていない方の作った明細書なのでしょうが、たとえ下位概念であってもやってみないとどんな優れた効果が生じるかわからない面もあると思いますので、上のケースと同じようなことが生じ得ます。
要は広いクレームといっても、実際に検証していないものをクレーム(または明細書)に具体的に記載するのは非常に危険であることをしっかりと認識することが重要で、ポートフォリオにはその点もきちんと加味していくことが必要だと思います(結局しっかりとポートフォリオを作ることが重要)。
ではでは