「それってパクリじゃないですか?」第7回 解説

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Last Updated on 2023-05-25 by matsuyama

※以下、ネタバレを含みますので「それってパクリじゃないですか?」第7回をご覧でない方はドラマ観覧後にお読みいただくことをおすすめします。

弁理士が登場する知財のドラマ!日本テレビ系列「それってパクリじゃないですか?」第7回、いかがでしたか?

にゃんこ好きな私としては、にゃんこを軸にした話の展開?最高でした。

今回の話は、特許侵害の話でしたが、皆さん難しくなかったですか?

本当は、特許の侵害かどうかの判断は、それ自体が難しいのです。特に食品や洗剤等の化学系の技術は、ほんとに判断が難しいです。

警告状が来て、すぐに「侵害してますねぇ~」なんて感じにはなかなかなりません。

<解説ポイント① 特許の侵害(正確には特許権の侵害)>

特許権の侵害といえるのはどんな場合かと言うと、

  正当理由又は権原なき第3者が

ii  業として

iii  特許発明の実施をしている

場合です。

何か、やっぱわかりにくいですね。

平たく言うと、

iは、法律で「いいお」ってなってる場合やライセンスをもらった場合は非侵害だよ!ってことです。

iiは、ビジネスとしてやっちゃ駄目だけど、自分だけでこっそり作って使うんなら(私的利用といいます)「いいお」ってことです。

iiiは、「特許発明品」を作ったり、売ったり、「特許方法」を使っちゃ、駄目よ!ってことです。

この、「特許発明品」とか「特許方法」っていうのが、なんかわかったようなわからないような、あーなんかモヤッとするところですよね。

特許権は、特許請求の範囲という書類に記載された請求項に基づいて設定されます。

そして、特許発明品や特許方法と言えるには、この請求項に記載された発明の構成要件を全て実施していることが必要です。

逆に言うと、全てを実施していなければ非侵害です。

要は、発明を構成する要素を全て含んだものを作ったり売ったりしていれば「侵害」、一つでも欠けていれば「非侵害」になります。

なんて、ほんと、何度も言いますけど、小難しいですね。

具体例で考えてみましょう。

i「軸断面が六角形である鉛筆」

実施品が、「軸断面が六角形」なら侵害、円形、四角形、五角形、八角形なら非侵害です(ただし、均等論と言う小難しい議論があって、多角形は侵害になる場合があります)。

ii「水と、界面活性剤と、消泡剤と、酸とを有する洗剤」

実施品が、水と、界面活性剤と、消泡剤と、酸との全てを使っていれば侵害

酸の代わりにアルカリ剤を用いていれば非侵害となります。

侵害論は、非常に難しい議論が沢山ありますが、まあ、こんなところを理解しておいてもらえればいいかな、と思います。

特許になっている発明の構成要素を全て含んでいないと侵害ではない、ことは理解しておいてください。

<解説ポイント② パテントトロール>

ドラマでは、パテントロールという言葉が出て来て、今回の相手方は「パテントトロールだ」と言う感じの言われ方をしていました。

ドラマとしては、こんな感じで展開した方がインパクトあるし、相手先の会社の悪者感がでて良かったと思います。

パテントトロールって、「特許の怪物」なんていうふうに訳されているみたいです。

トロールって、ハリーポッターやRPGによく出てくるあれですよね。

パテントトロールは、一時期結構問題になっていました。

明確な定義はきちんと定まっていないと思いますが、「実施するわけでないのに特許権を保有して、実施者に特許権侵害による賠償やライセンスの許諾を行うことで金銭をせしめる」業者といったところでしょうか。

ドラマ見る限りでは、相手方の会社はパテントトロールという感じではなかったです。

今後の展開は分かりませんし、鶴見辰吾さん演じる役どころがどうなのか、うーん、たのしみですね。

とりあえず、今回見た限りでは、相手方の会社は、自社で開発した技術を使っていました。売っていた青汁そのものではないですけど。

また、主人公の会社に警告を出していましたけど、一応は自社で取得した特許のようでした。

まず、ここがパテントトロールかどうかの分かれ道でしょうかね。

パテントトロールだったら、まず自分で開発して特許の取得をしたりはしないです。

特許を取得するための費用(約100万)よりも、開発にかかる費用の方が高い場合が多いですし、開発費と特許取得費用の両方を回収するのは困難です。

今回のドラマでの特許権に基づく警告は至極当然のものだし、交渉の最初の段階で金額をふっかけることはよくあることです。それほどひどい会社さんというわけではないと思います。

まあ、ビラばらまいたり、息巻いたりするのは、NGですけどね。

パテントトロールは、普通、自分たちで開発して取得した特許ではなく、他人が取得した特許を用いて事業を行います。休眠特許(企業で使われずに眠っている特許)を安価に取得するのが、よくあるやり方ですね。パテントトロールの。

休眠特許なら、取得の費用程度で売ってくれる可能性が結構あります(もっと安くても売ってくれるかも、特に資金繰りに窮していると……)。

なんだかパテントトロールというと「すごい汚い奴らだ。特許を食い物にして」と思うかもしれませんが、私は結構評価できるところもあるのではないかと思っています。

もちろん、金額をあまりに吹っかけて、他人を追い込む等業務の妨害行為を含むやり方は駄目ですけど。

でも、パテントトロールのおかげで休眠特許が活用される、権利取得の重要性や権利意識に経営者が目覚めるということがあります。

その意味では、「パテントトロールの存在意義もある」そう思います。

<誤解しないで 警告って実は身近>

ドラマのように警告を受けることって、一般人が普通に社会生活を行っているだけなら、まずないよね。

そう思っていました。

私も。

しかし、昨今の詐欺の多様化で、警告状(裁判所からの書面を語るもの)が届く世の中になってしまったと感じます。

実際、私のところにも裁判所から訴訟提起された案件があるとハガキが届いたことがあります。

見たとたんに、これは詐欺だと気づきましたが……。

要は、警告書なんて、だれのところに送られてきたとしてもなんら不思議がないです。そう声を大にして言いたい。

ちなみに、特許権侵害としていちゃもんつけられたときは、取りうる手段が4つあります。

止める(中止)。

かわす(設計変更)。

もらう(ライセンス取得)。

つぶす(無効審判請求)。

です。

ですが、最も重要なことは、本当に相手は権利者なのか、権利は本当に有効なのか、そういう基本的なところはしっかりと見て検討しておく必要があるということです。

一番の敵はパニックになる自分です。

冷静に対処すればいいだけの話です。

でも、難しいのです。

冷静になるのが

だからこそ代理人が必要なのです。

人のことは冷静に見られますから。

多分。

ほんとに?

多分。

……

ではでは

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