Last Updated on 2019-07-11 by matsuyama
こんにちは。弁理士の松山裕一郎です。今回から、知的財産についての基礎講座を連載していきます!知的財産、聞いたことあるけどよくわからない…という方やそもそも知的財産って何なんだ??という方、ぜひ読んでみてください。
早速ですが、ここで問題です。
Q.知的財産権が権利として保護しようとしているものは、「知識」です。そもそも「知識」とはなんでしょうか?
「知識」??
意外とこの言葉の意味について、きちんと考えることって少ないですよね。
「知識」とは、広辞苑によると、「ある事柄に関する明瞭な意識を言う」
とあります。 よく一般的には、「あの人は知識がある」といいますね。これは普通、ものをよく知っていることを意味します。 知識があるというのは、単に情報がインプットされているというのとは違うんですね。 その人の意識に組み込まれている、新たな情報源が生成されていることになると言えます。 だから、その人の意識に組み込まれている段階で新しいものとなっている(主観的には)からこそ保護する必要があるといえるのです。
知的財産権の保護しようとする「知識」の意味。それが「新しいもの」と言い換えることのできるものであることまではわかってきましたね。それではここで、もう一つ問題です。
Q.知的財産権に関する法律は、結局何のためにあるのでしょうか?
「新しいもの」を保護することが、わざわざ法律で定められているのはなぜでしょうか。結局、知的財産権とは何なのでしょう。
これは各法の法目的(各法第1条)を見るとわかります。
各法律の条文の第一条には、たいていの場合「その法律の目的とそれを達成するための手段」とがまず記載されています。
また、場合によっては、最終目的(大目的)とそこに至る前段階の目的(小目的)が記載されている場合もあります。たとえば特許法などがそうです。 こうしたときには大目的→小目的→手段、の順で最終目的からさかのぼっていくように記載されています。
知的財産権を保護する法律は、「知的財産法」と呼ばれています。
ひとくちに知的財産法といっても、これを保護するための法律はひとつではありません。そこで!各法の法目的を表にまとめてみました。
これまでで知的財産権が知識を保護しようとしていて、そのための法律がひとつではないことがわかってきました。知的財産法っていくつもあるんだ、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
知的財産を守るためにこんなに法律があるのには、もちろん訳があります。
それは、それぞれの法律で具体的にどんな「知識」を保護しようとしているのかが違っているからなんです。
それでは知的財産講座、第一回目の最後の問題です!
Q.知的財産権は、何を保護しているのでしょう?
「知的財産」としてそれぞれの法律が保護する「知識」、新しいもの。これは一般的に「知的創造活動の成果」と呼ばれています。これらを権利として保護することで、産業や文化の発展を実現しようとしているのでした。新しいもの、それは物としての発明品であったり、これまでになかったような技術そのものであったり、有形・無形さまざまなものがあります。
知的財産権に関する基本的な事項をまとめた知的財産基本法には、「知的財産」について以下のようにまとめられています。
この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
知的財産基本法 第2条
それでは、ここでそれぞれの知的財産法が保護している具体的な対象について、表でまとめたものを見てみましょう。
このような具体的な保護の対象について、各法律ではだいたいが第2条に定められています。
これまで、知的財産権の「知的財産」の意味や、保護している法律にどんなものがあるか、少しでも親しみをもっていただけたでしょうか。
法律は、私たちがより良い世界で生きようとする思いがその根底にあります。そうしてどんどんと細分化されていったもののひとつが、今回からご紹介する知的財産法なのです。
次回はそれぞれの知的財産法について、もっと深く掘り下げるコーナーを展開していきます。お楽しみに!