Last Updated on 2024-03-05 by matsuyama
参考 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD18CJ50Y4A110C2000000/
中国の磁石メーカー4社に独占禁止法違反で訴えられていた裁判で、中国の最高人民法院(最高裁)がプロテリアル勝訴の判決を下したそうです。
何が争点だったかというと、「特許の利用許可(ライセンス)を与えないことが市場支配的地位の乱用にあたるか」だったとのことです。
これ、特許を有しており、実施しているのであれば、利用許諾を与えるか否かは特殊な事情(供給量不足等社会的要請がある等)がある場合を除いて権利者の自由だと考えていましたが、特許のライセンスを与えないことで、第1審で負けていることが理解不能です。
表向きは上述の理由ですが、裏で問題になるのがなにかというと、これ技術流出になります。
特許のライセンスって、特許発明を実施していいよ、ということですが、実は「実施していいよ」で実施できるものは、化学分野では少ないです。
化学分野では、本当に微妙なすり合わせ技術が必要です。すり合わせ技術って言っても色々あります。温度管理や撹拌の方法、添加速度等などです。これらの細かい作業工程をきちんと細かく制御して初めて高品質な物が出来上がるわけです。これって、本当に血の滲むような努力の積み重ねの上に成り立っているのです。どれだけの試行錯誤を繰り返して高品質にたどり着いたか想像すると泣けてきます。
そして、ライセンスすると言うのは、単に特許発明を実施していいよ、というだけではなく、発明品がちゃんと作れるように技術指導をするということもセットになることが多いのです。というか、それを込みにするのが通常です。
ということはですよ。ライセンスを行うということがどういうことかと言うと、特許に表しきれない、これらの細かい作業工程のノウハウまでもライセンス先に教えることになるわけです。
これって、お金の問題じゃないのです。我が国の技術の競争優位性を放棄することに繋がりかねないのです。お金をもらっても全く割に合わないのです。
長年かけて作り上げてきた技術ノウハウが流出することになるのですからね。
それを考えると、おいそれと特許のライセンスを供与することはできないのが道理です。
そして、そのことを認めてくれたのであれば中国の裁判所もかなり進歩的になってきたのかなという感じがします。
でも、ほんとうに信じていいのでしょうか?
一抹の不安が……
参考の記事によると、論旨は「代替技術が無いわけではないから支配的地位にいるとは言えない。支配的地位に無いのであるから、地位の乱用には当たらない」というものでした。
そりゃそうですけどね。
ということは、代替技術がない場合には、支配的地位にあるといえ、地位の乱用になるというロジックが成り立つのでしょうか?
そうなるとなんのための特許なのか、ということにもなりかねませんね。
うーん、やはり、製造拠点としては色々考えてから慎重に構えた方がいいのではないかと考えさせられる判決でした。
マーケットとしても製造拠点としても重要な国であることは間違いないので、この判決をしっかりと分析して、重要なノウハウをしっかりと守っていけるように戦略的に展開しなければならないですね。
なにせ我が国の産業の肝は、やはりノウハウにあると思いますので。
ではでは