Last Updated on 2024-11-22 by matsuyama
ハウス食品の「のっけてジュレぽん酢」を分析してみたいと思います。
液体調味料を固形物にするという発想がいかに生まれてきたのか、紹介します。
○ハウス食品「のっけてジュレぽん酢」~1~
■現象と分析
(1)現象
ハウス食品では1995年に「冷しゃぶドレッシング」(レモンおろし醤油、ごまみそ、豆板醤)を販売しました。
この商品は、冷しゃぶというメニューがまだ一般化していなかったこともあり、しばらくは一世を風靡していましたが、冷しゃぶ用の調味料の主役をいつの間にかポン酢に奪われてしまいました。
当社には、「ねぎ生姜」「ゆず胡椒」「おろし唐辛子」といった業務用のゼリータイプ調味料もありましたが、これらのゼリータイプの調味料も売り上げが横ばいであるという悩みを抱えていました。
このため新しい調味料製品の開発が至上命題となっていたのです。
ここで、同社の開発チームの一員である中谷さんは、業務用のゼリータイプ調味料にはポン酢がないということに気づいたのでした。
さらに、消費者の声に「ポン酢は汎用的な調味料で人気がある一方、液体のため野菜にからみにくい」といったものがありました。
そこでゼリータイプの調味料としてポン酢をつくることになったのです。
2011年2月、「のっけてジュレぽん酢」は発売されましたが、味のしみ込みやすさや香りの飛散に工夫を重ね、開発サイドと研究サイドで何度もやり取りを繰り返していきました。
その結果、昆布だしのまろやかさと柚子のさわやかな風味を生み出したのです。
商品名についても、ジュレというネーミングでわかるのか、という意見が社内から出てきたものの、中谷さんたちはフランス料理がカジュアルになってきており、「ジュレ」はおしゃれな感覚の言葉であると、熱っぽく社内を説得していきました。
そして、「のっけてジュレぽん酢」として発売された後は、11年11月末までに8億円超の売り上げをあげたのです。
味に加えて、ジュレという新鮮で豊かな感覚が消費者―特に20~30代の若年層の支持をかちとっています。
さらに、日本経済新聞社「2011年日経優秀製品・サービス賞」最優秀賞 日経MJ賞ほか、メディア各社から賞をもらっています。
これらの受賞は、液体調味料であるポン酢をジュレにするという発想が消費者や企業などから認められたことを示していますね。
(2)分析
「のっけてジュレぽん酢」が生み出される前、上述の通り、ハウス食品では一般商品のドレッシングと業務用商品の調味料という異なる販売領域にある二つの商品がそれぞれに問題点を抱えて苦悩していました。
それらの苦悩を同時に解決したのが「のっけてジュレぽん酢」でした。
そもそもの苦悩は冷しゃぶドレッシングがポン酢に取って代わられたことから始まっているのでしょうが、通常のポン酢を打ち負かすためにとった手段が液体状の調味料を固形調味料にするという手段でした。
そしてこの手段は当社の従来商品である業務用調味料にヒントを得たものだったのです。
「のっけてジュレぽん酢」は、ポン酢という液体調味料をゼリータイプの固形物にしたことが特徴です。
ここで、開発者は単に液状のポン酢を、寒天を用いて固めたのではなく、調味料として使いやすく、味や香りについても十分に満足できる商品を、新たなアイデアを出して開発しています。
つまり、液体調味料であるポン酢の問題点をゼリータイプにすることで解消し、ポン酢をゼリータイプの固形にしたことで生じる問題(コンフリクトと言ってもいいでしょう)を解消して消費者に今まで見たこともない商品を提供することに成功しています。
商品の売り上げが伸び悩んだり、落ち込んだりしているという状況で、もう一度各商品の問題点を洗いなおして、新たな製品を模索することにより、活路を見出しているといえるでしょう。
また、「ジュレ」というネーミングへのこだわりも売り上げが伸びている一つの要因になっています。
「ジュレ」はフランス語でゼリーのことを指しますが、消費者への商品イメージ浸透の上でも大きな役割を果たし、商品のブランド化に成功しているといえるでしょう。
参考URL
・http://j-net21.smrj.go.jp/develop/foods/entry/2012030201.html
(JP-NET21「のっけてジュレ」)
・http://housefoods.jp/products/special/gelee/index.html
(ハウス食品「のっけてジュレ」)