Last Updated on 2022-10-13 by matsuyama
創作物、芸術は人間だけが生み出せる特別なもの―
この認識は終わりを迎え、新しい時代がやってきました。
「Midjourney」などのAIによる絵画の生成サービスははもはや芸術の域のようにも見え、それを多くの人が感動をもって眺めています。
AIが作成するイラストに対して、その学習ソースとして自身の作品を使われてしまうクリエイターにできることは何があるでしょうか。著作権の基本からまとめています。
無断転載は著作権法違反。クリエイターを守る権利が著作権です
そもそも著作権って何だっけ?どんな時に主張できる権利なの?
「著作権」は人が作ったものに対して付される権利であり、また権利を侵害する側も人であるという前提のもとに生まれた権利です。はじめに著作権の基本についてご説明します。
自身が描いたイラストや作り出した作品には、特別な手続きなどをしなくても当然に著作権があります。
著作権というのは、「(人が)思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に生じる権利です。具体的には上記イラストだけでなく、
・描いた絵(イラスト、漫画など)
・作った曲
・作成した動画
・文章作品
などに生じる権利です。
そのため、自分の描いたイラストを別の誰かが許可なく「私が描きました」などと言って無断転載している現場を見かけたら、無断転載した人に対してはこの著作権に基づいて無断転載を辞めるよう伝えることができます。
さらには、無断転載は「著作権法」という法律に違反する違法行為になるので、告訴することで無断転載者(作者の著作権を侵害した者)に対して刑事罰として懲役刑や罰金が科されます。
具体的に言うと、無断転載の場合は著作権法の21条(複製権)及び同法23条(公衆送信権)を侵していることになり、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることになります。
加えて民事訴訟として損害賠償請求も行われることがありますので、無断転載はまず「やってはいけないこと」です。
ただし、例外的に「引用」と認められる場合には著作権侵害とされないケースがあります。こちらは要件が細かいので、またの機会にご説明します。ざっくりお伝えすると映画や漫画の考察やこのシーンが最高だった、みたいなことを伝えるために出典元や著者を明記した上で一部画像をもってきたりすることは著作権侵害にならなかったりします。
まとめ📝著作権と著作権法違反
☞著作権=「(人が)思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に生じる権利
☞無断転載(クリエイターの許可なく勝手にSNS等に作品を載せること)は「著作権法」という法律に違反する違法行為になる
大前提として無断転載はやっちゃだめなことなのです
AIが学習して生み出したイラストも著作権侵害にあたる場合がある
著作権の基本がわかったところで、今回のメインにはいっていきます。
Q.AIが自分の絵を学習して作り出した自分の絵そっくりのイラストがある場合、著作権侵害にあたるかどうか。
結論から言うと、著作権侵害にあたります。ただ、判断はケースバイケースになります。
先ほど、著作権という権利は人の創作物に生じる権利であるとご説明しました。
しかしAIは人ではありません。ネット上で「AIによる無断学習を禁じます」と記載しているのを見かけますが、法的に言うとAIによる学習自体は著作権法上違法にならず、一方的に禁止にしても法的効果はないのが現状です。(著作権法30条の4 第二項に詳しく書かれていますが、ここでは割愛します)
ここで注意したいのはAIの「学習」過程が違法ではないだけであり、AIが作り出したそっくりイラスト等をネット上に掲載した人がいた場合、その行為が著作権侵害にあたるということです。
AIで学習させた誰かの作品そっくりのイラストを掲載していたら、それは著作権侵害にあたります。著作者は自身の著作権を侵害しているAIのイラストを掲載した人に対して、上記同様に掲載をしないことや告訴をすることはできます。
しかし、難しいのが「無断転載」と「AIイラスト」は別物であること。
無断転載は勝手に全く同じものを転載することです。これは作品の複製と発信にあたるのでもちろん違法なのですが、AIイラストは「完全なるコピペ」でないこともあります。オリジナルの作品とほぼほぼ同一のものが生み出された場合には明快に著作権侵害と判断されると思いますが、例えば「タッチが似ている」「線画の雰囲気が似ている」などの微妙なラインはどうでしょうか。
こういったものまで著作権侵害としてしまうと、表現の幅や文化的な生産性は著しく狭まってしまいます。こうした場合は違法にはならず、今後もそのようなとがった法律上の判断はなされないのではないかなと個人的には思います。新しい分野なので法整備や判例も少なく、今後の裁判例が重なる中で判断基準が探られていくことになるのではないでしょうか。
まとめ📝AIイラストと著作権
☞AIイラストでも、ほぼ同一の作品が出来上がってしまいアップロードされると著作権法違反になることがある
☞「似ている」の線引きは難しい部分もあるのが実情。ケースバイケースであり、法整備はこれから
クリエイターの活躍も技術の進歩も応援できる世の中にしていけるといいなと、個人的には思っています
著作権とAIがもっとわかるおすすめ本
大きな進歩を遂げて、活用が広がる人工知能(AI)。
松原仁 東京大学次世代知能科学研究センター(AIセンター)教授 本書「解説」から
AIの成果とその仕組みから、多くの未解決問題、
潜在的な利益とリスク、科学的・哲学的な問題まで、
身近になったAIの現況と見通しを深く掘り下げつつ、
わかりやすく説明した1冊です。
現場でトラブルになりがちな権利の問題について、クリエイターとしてやってはいけないこと、権利を侵害されたときの具体的な対処法を、わかりやすくまとめたクリエイターのためのバイブル。
内容紹介(「BOOK」データベースより)
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