「それってパクリじゃないですか?」第4回 解説

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Last Updated on 2023-05-04 by matsuyama

※以下、ネタバレを含みますので「それってパクリじゃないですか?」第4回をご覧でない方はドラマ観覧後にお読みいただくことをおすすめします。

弁理士が登場する知財のドラマ!日本テレビ系列で「それってパクリじゃないですか?」第4回、いかがでしたか?

今回は商標登録出願についてでした。

ビジネスにおいては、商標はとっても大事です。

いわゆるブランドの保護と言った方が判りやすいかなと思います。

さてさて、今回もドラマで出てきた知財について解説していきましょう‼

 ドラマでは「区分を制する者商標を制する」という趣旨のセリフがありました(正確でなかったらご勘弁ください)。

<解説ポイント① 商標は区分ごと?>

 社外の弁理士役のともさかりえさんのセリフでした。ともさかさん、昔のドラマでロッカーの花子さん、めっちゃ面白くて好きでした。

 このセリフは間違いではないですが、「商品・役務(サービスのこと)を制する」と言うのが正確です。

 区分は、商品・役務を45に分類したものですが、似た商品・役務が同じ区分に属するとは限りません。

 区分を選定することが重要なのではなく、その商標(ここではマーク、ロゴや名称を意味します)を、何の商品・役務に使用するのか、又は使用する可能性があるのかをしっかりと見極めることが必要です。

特に今のビジネスは製造・小売り・情報サービスの提供者が明確に分離されておらず、様々な商品・役務を一人の事業者が提供できるので、商品・役務の選定は非常に重要です。

例えば、トマトの生産を行っていた人がトマトピューレを製造販売することにしました。更に、そのトマトピューレを用いた各種料理のレシピや効果的な使い方をWEBサイトにて提供する予定としています。

その際の商標として「ピュートマ」(うわ、センスない)を使用することにしました。

この場合、最低限権利取得しないといけない商品・役務は、トマトピューレ、トマトピューレの小売り、及びインターネットを介した料理に関する情報の提供、だと思います。

ここで、前回も説明した上位概念、下位概念という考え方が出てきます。

簡単にいうと、上記の商品・役務は下位概念ですが、非常にピンポイントな権利になります。もしトマトピューレ以外のトマト製品、例えば、ケチャップ、ジュース、ソース、缶詰等に展開しようとしたときに、トマトピューレしか権利を持っていないと権利無しでビジネスすることになりますので、より上位概念の商品・役務で権利化することが必要になります。

じゃあ、上位概念は食品だ、ということで食品に関する商品・役務を探すと、該当しそうなものに、以下の商品・役務がヒットします。

区分 5 栄養補助食品

区分29 野菜を主原料とするスナック食品

区分43 食品に関するレビューの提供

なんだか遠い感じがしますよね

そもそも「トマトピューレ」で調べてみると

区分29 トマトピューレ、トマトペースト、調理用トマトジュース

区分30 トマトソース

区分31 トマト

区分32 トマトジュース

更に「小売り」は区分35、知識の教授は区分41になります。

こういうのを片っ端から権利化すればいいんだろ、って思いますよね?

厄介なのは、この区分ごとに出願時の印紙代と登録時の印紙代がかかることです。

特に登録料は、10年分一括だと1区分ごとに32,900円かかります。

区分の数が10になると、329,000もかかるのです。

費用対効果を考えて、最適な区分の数で、必要な権利を取得することが重要になります。区分を制する、というのは、そういう意味の言葉です。

深いですね~(しみじみ)。

<解説ポイント② 公共物?の権利化>

今回は、縄文時代の土器に描かれたキャラ「ツキヨン」が公共物じゃないのか、公共物なら誰かが独占権を取得してもいいのか、という問題提起がなされていました。

この問題提起に対しては私見があります。これについては後述しますが、ここでは公共物の権利化について解説しておきたいと思います。

そもそも、今回のツキヨンについては、公共物と言える部分とそうでない部分があります。

土器に描かれた図形は、大昔の作者不明のものなのでもはや誰のものでもない公共物と言えます。

ツキヨンという名称については、名付けた人の創作物と言えますが、キャラクターの名称については著作権がないというのが一般的な判断なので、ツキヨンについても著作権で保護されるものではないでしょう。

そう考えると、今回のツキヨンというキャラクターについては公共物(キャラデザイン)と著作権のない創作物(名前)との組み合わせからなる物、と言えます。

ドラマでこんな面倒くさいことは言えませんから、単に公共物と言っていたということですね。

超重要‼ 誤解しないで 独占排他権の意味>

さて、公共物に対して独占権をとるのはどうか、という議論がドラマでありました。

主人公側では、公共物に対して独占権(正確には独占排他権)を取得するのはダメで、独占権を取得しない方がいいものもある、というロジックを立てていました。

確かに、一理ありそうです。

一見……

ほんと?

ドラマでは、主人公の会社とそのライバル会社、親会社くらいしか出て来ませんでしたが、現実にはとても多くのビジネスを行う人(会社が大部分ですが)がいます。

皆がいい人ではありません。

公共物なら商標権の取得は可能です。

となると、誰かに権利を取られる可能性は高いのです。

このような議論は特許でもよく出ます。

「この技術は皆に広く使ってほしい。だから特許権は取りたくない」というロジックです。

これ、大間違いです。

広く使ってほしければ、権利化する必要があります

だれかに権利をとられてしまうからです。

正しいやり方は、自分で権利を取得して、権利を開放するやり方です。

更に、技術指導などを行い、新たに開発した技術についても同じような開放戦術をとるように契約すればベストですね。

今回の商標権についても、権利化して開放するのが正しいと言えますが、それは主人公の会社がやることかというと、そうではなく広めたユーチューバーが行うことでしょうね。

会社としては、粛々と権利化を行い、もし炎上したとすれば(現実には権利行使して差し止めでもしない限り炎上しないと思いますが)開放することを宣言すればいいと、思います。

ちなみに、ドラマでは、ツキヨンを出願したライバル会社が「公共物を権利化しようとした」として炎上していました。

炎上の可能性はあるかもしれませんが、ドラマのように早くわかるということはありません。

商標にも公開制度がありますが、出願から2~3週間かかります。

更に、公開されてから炎上するまでは数日はかかるでしょう。1か月後くらいかなと思います。

あ、ドラマですから、あれはあれでいいのですが、現実は少し違うということを言いたいだけで……

ではでは

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