裁判例紹介:「創作容易性」「類否判断」

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Last Updated on 2019-07-18 by matsuyama

こんにちは。弁理士の松山裕一郎です。今回は、最近争われた裁判例から、「創作容易性」そして「類否判断」がキーワードとなったものをご紹介します。
※このコーナーでは、各裁判例の中で知的財産にまつわる部分を重要争点としてピックアップしてご紹介しています。詳細は記事末尾記載のURLよりご覧ください。


事案の概要

被告は、平成16年4月12日に部分意匠の出願をし、同年10月22日に意匠権の設定登録を受けた(以下本件意匠登録という。)。原告は、本件意匠登録について無効審判の請求をしたが、その結果は「本件無効審判は成り立たない」というものだった。そこで、原告は、この判決の取り消しを求める本件訴えを提起した。原告は、「本件意匠は、検査用照明器具において放射能熱を担う放熱部のみを抽出した部分意匠である。(略)本件意匠登録は引用意匠1と基本的計上はほぼ同じであり、その他の部分でも特段の美観の差異を認定できない以上、両者は類似するものと判断するのが素直である。本件意匠は公知・慣用の意匠である。本件意匠を創作することは当業者に容易である。」と主張した。これに対し被告は、原告主張を否定した。

争点

  • 争点1:本件意匠における類否判断の正誤
  • 争点2:創作容易性の判断の当否


判決とその理由

争点1:本件意匠と引用意匠1とは類似しない。
  本件意匠の放熱部は3枚のフィンを、間隔を開けているのに対し、引用意匠1の放熱部は4枚以上のフィンを密にした状態で構成されているので、本件意匠と引用意匠とでは、両者は、視覚を通じて起こさせる美感が異なると認定すべきである。

争点2:引用意匠1に基づいて本件意匠を創作することが容易であるとはいえない。
 引用意匠1との各相違点に係る本件意匠の構成が、周知のものまたはありふれたものと認めるに足る証拠がない。そのため引用意匠1のみに基づいて当業者が本件意匠を創作することが容易であったとは認められない。

コメント

 意匠の類似については、法改正により、需要者の視覚を通じて起こさせる美感を基準とする旨規定されています。そして、物品の類似と形態の類似との両方で判断します。物品の類似は、物品の用途及び機能が共通する場合であり、形態の類似は美感が共通することと言われています。そして、形態の類似を判断したのがこの判決になると思います。注意すべきは、物品の形状は機能と切り離せない場合が多い、ということです。機能必然の形状なのか、同様の機能を達成しうる形状が複数ある場合の一つなのかによって、類似するかしないのかの判断に差ができます。
本件は、後者であったため、類似しないという判断に大きく傾いたといえます。



原文:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/769/088769_hanrei.pdf

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この記事を書いた人

特許事務所での実務を活かして、知的財産にまつわるあれこれをご紹介していきます。

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