Last Updated on 2022-10-13 by matsuyama
以前の投稿で、趣旨の書き方について書いたことがあります。
趣旨の書き方も「形式が大事」で、
「原則」→「しかし」→「そこで」
の流れで書くべきなのだということを言ったのです。
今読み返してみると、ちょっと説教じみていたな、と反省するのですが、内容自体は間違ってはいないかなとも思います。その内容ですが、もう少し詳しく説明してもいいのかなと思います。改めて、「趣旨の書き方」について、私なりの見解を書いてみようと思います。
趣旨の書き方
前提として、いわゆる法学を勉強されている方や司法試験を勉強されている方は、趣旨を述べるときに前述の形式を必ずしも意識してはいないように思います。司法試験で趣旨を書くときには、
「思うに第〇〇条は、××を徹底することの不合理を解消することにある」
という感じで趣旨の根幹をなす部分を書くことが多いです。
これは、趣旨の流れを示すことよりも趣旨のあとに続く規範を書くことの方に重きをおいているからに他なりません。
これは、法律の社会への適用を考えると、必ず法律の文言でカバーできない事件があり、その場合に法律の文言を解釈して、事件に当てはめて妥当な結論を導く必要が生じるからです。
例えば、ある条文に「第三者」という文言があったときに、利害関係人はこの第三者に該当するかという問題が生じたとします。
そのときには、この条文の趣旨を理解して、この第三者をどう解釈するべきか規範を示し、その規範にこの利害関係人を当てはめて、この利害関係人がこの第三者に該当するか、判断することになります。だとすると、この場合の趣旨を説明するときにいちいち上述の形式に当てはめて書いていると、試験では紙面も時間も間に合わない、実務では論旨がまどろっこしくなり、冗長で要点を得ないものになりがちです。だから、趣旨はコアの部分だけを記載します。
このようなアウトプットの一形式としての簡略的な記載法は、あくまでも完全な形式の理解の上に成り立ちます。要は、法律が例外を規定することで成り立っているとするなら、まず原則を理解して、その原則における問題点を抽出して解消しようとする、一連の趣旨の流れを理解してこそ、法律の運用ができるし、法律を作ることもできるのだと信じています。
もちろん、「趣旨を述べよ」とか、「〇〇制度について説明せよ」という一行問題の場合には、形式を守って趣旨を書かないと問いに答えてないと言えると思います。
原則⇒問題点指摘⇒結論 の形式を守って書くことが大切です!
ここで、原則というのは、「その条文がなかったらどうなの?」ということです。例えば特許法なら、29条第2項(進歩性)の規定がなければどうなのかというと「新規性を満たせば登録され得る」ということになります。原則とはそういう意味です。そして、この問題点を指摘します。それが「しかし~」になります。進歩性なら、「特許権が乱立して自由に実施できる発明がなくなってしまう」ということです。ここまでくると、「だから、新規性があってもさらなる特許要件を設定して、乱立を防止する必要があり、法は進歩性を規定した」という結論部分が導出されます。
そして、やはり結論は以下のように結ぶことができます。リーガルマインドを伝えるために必要な書き方だから、先人はこういう形式を確立してくれたのだと思います。形式を整えることが知識を表すのに必要不可欠なものなのでしょう。
受験生の皆さん、形式を軽視しないで、がんばってください!ファイト!
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