生成AIは発明者になれるのか?英国のケースから

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参考:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/europe/2024/20240108.pdf

英国最高裁判所、AI「DABUS」を発明者とする特許出願について判決をだしたということです。

英国最高裁判所(The Supreme Court)は、2023年12月20日、Stephen Thaler 博士の人工 知能(AI)「DABUS」を発明者として出願された2つの英国特許出願について、英国控訴院による判決に対する上告を棄却する旨の判決及びプレスサマリーを、ウェブサイトにて 公表しました。

それによると、英国最高裁判所は、「この特許出願は方式要件を満たさないので取り下げられるべき」という原審の結論を支持しています。

JETROの記事によると、論点は3つあると言っています。そのうちの一つ、発明者の範囲については、生成AIの発明論はさておき、発明者は自然人でなければならないという点については、明確に確認していると言えそうです。

ちなみに、原審の論旨は、簡潔にすると、「現状の法律上、発明者は「人 間(a human person)」を意味するから、AI マシンを発明者とすることは特許法に基づく要件を満たさない。よって、方式要件を満たさない」という感じです。

この問題は、今後の我が国においても現実の論点として出てくると思います。また、法整備も必要になるのでしょう。

私見としては、現状では、100%生成AIが発明をすることは考えられないと思います。現在の生成AIは、何らかの質問(プロンプト)を入力することで回答を引き出しています。すなわちプロンプトの作成に人間が関与しています。

もちろん、プロンプトの作成自体を生成AIに任せることも可能ですが、普通発明は何らかの課題を解消するために想到される個別具体的なものになります。したがって、自動的にプロンプトを作成することは考え難く、個別案件に応じて人間が考えて入力するものと思われます。

そして、生成AIが考え出したものがそのまま使えることも稀でしょう。多くの場合(現状はほぼ全てではないかと思います)は、生成AIが考え出したものを加工またはすり合わせをして、発明を完成させるはずです。

だとすると、生成AIへの入力及び結果物の修正で人の関与があるので、必ず発明者は人になると考えられます。

実益の観点からしても、生成AIが名誉や報酬を求めることは、現状ではないでしょうから生成AIに発明者としての権利を認める意味がないと言えます。

このように、現状は特に法整備をしなくても生成AIの発明者適格を論点にすることなく、生成AIにより発明行為に協力する自然人(というかこちらが主体です)を発明者にすれば足りると言えます。

しかし、将来的には、課題さえ与えればすり合わせの必要がないソリューション(発明)を生成AIが考え出すことも可能になるでしょう。

その場合には、生成AIを発明者にしなくてもいいのですが、生成AIにより発明の存在を認めて、発明者の権利は、ハンドリングを行った者が有すると考えるべきではないでしょうか。

発明者の権利(特許を受ける権利を含む)は重要なので、この発明者の権利を生成AIに変わって受け取る自然人がいないと権利関係の解釈が煩雑になるからです。また、生成AIの所有者とすると、生成AIの提供以外に何ら寄与しない、生成AIの提供会社のみが種々発明を掌握することとなり、著しく不公平となるからです。

いずれにしても、早く議論を深めて法整備を行うべき領域でしょう。

ではでは。

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