裁判例紹介:不正競争防止法

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Last Updated on 2019-08-22 by matsuyama

こんにちは。弁理士の松山裕一郎です。本日は、過去に争われた裁判例から、知財にまつわるものをご紹介していきます。

事案の概要

原告は外壁塗装リフォーム業者である。原告は同業者である被告が自ら管理・運営するいわゆる口コミサイト(以下「本件サイト」という)において被告をランキング1位の表示にしていたことを発見し、これが平成27年法律第54号による改正前の不正競争防止法2条1項13号(現行法14号,以下現行法を記載する。)の不正競争(役務の質,内容について誤認させるような表示)に該当し、原告の営業上の信用が毀損され、原告の営業上の損害が発生したとして、同法4条に基づき、損害金264万円およびこれに対する平成24年8月9日から支払い済まで、民法所定の年5年分の割合による遅延損害金の支払いを求めて訴えを提起した。

不正競争防止法2条1項14号:
「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為」

争点

争点1) 本件サイトが被告の提供する「役務の…広告」に当たるか
争点2) 本件サイトの表示が、被告の提供する「役務の質、内容…について誤認させるような表示」にあたるか

裁判所の判断

争点1)
本件サイトは被告の提供する「役務の…広告」にあたる
理由)
本件サイトの発注元は被告であるところ、被告の本件サイトに対する一連の態度(タイトル部分に「みんなのおすすめ、塗装屋さん『被告名』など多数掲載」のように被告名のみタイトル部分に表示させていること、口コミの投稿されている件数のみでランキングをつけているなかで、被告は事前に投稿された口コミの内容を閲覧して実際に掲載するか判断できる立場であること、本件サイト公開前に被告の口コミが既に数件作成されていたこと)に照らせば、被告が、被告の提供する役務に需要者を誘引するために本件サイトを開設したことは明らかである。

争点2)
「役務の質、内容…について誤認させるような表示」にあたる。
理由)
本件サイトを閲覧する者は、検索エンジンにおいて「外壁塗装」、「リフォーム」等の適宜の検索ワードを入力して、・・・本件サイトを選択して訪問すると考えられる。
本件サイトを閲覧する者は,外壁塗装業者やリフォーム業者に工事を依頼しようと考えており,そのための業者をインターネットにより探そうとしている一般需要者であるといえる。そして,そのような需要者は,・・・・掲載業者の中で最も「おすすめ」,つまり最も「優良」であると評価されていると基本的には認識すると考えられる。そして,本件トップページに表示されている「みんなのおすすめ,塗装屋さん」という表示及び本件ランキング表は,本件サイトのいずれのページにおいても表示されていることに照らせば,本件サイトの閲覧を続けていく限り,上記認識は補強されていくものと考えられる。
これに対し,・・・ある業者が「おすすめ」か否かは当該業者が提供するサービスの内容や質の良・不良によって決まるものであるから,「みんなのおすすめ」というタ
イトルの本件サイトのランキングが,これらの良・不良を問わずに口コミ件数のみで決定されているとは通常想定されないことである。
したがって,・・・本件ランキング表示については,そのランキングにおいて1位にランク付けられている被告の提供するサービスの質,内容が,掲載業者の中で最も優良であると評価されていると認識すると認められる。



原文URL: http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/622/088622_hanrei.pdf



コメント

最近では口コミサイトを通じてお客さんが依頼して来ることは多いと思います。その際に、ランキング表示がされているとついつい上位の業者に依頼するということも多くなっています。

こういう口コミサイトの業者が独立した別体の業者である場合には特に問題ないのでしょうが、もしも自分の会社のことを宣伝するために口コミサイトを開く場合にはかなり気をつけないと行けないということをこの裁判例では示していますね。

特に、ランキングを表示する場合が要注意です。ランキングは単なる広告とは違って需要者に与えるインパクトが大きく、完全に比較広告として認識されます。基準を明確にして、わかりやすく表示することが重要です。都合のいい部分だけを見せないようにしましょう!




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