特許の「実務」、解説します! NO.1 ― 序論

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はじめに:特許の「実務」とは?全体の流れからざっくり説明します

みなさんは「特許の実務」と言うと、どんなものを思い浮かべるでしょうか?
このページでは、特許の実務(お仕事)について初心者からでもわかりやすく、全体の流れをつかめるように解説していきます

 特許の実務、と言ってもその内容は多岐に亘ります。手続きに関するもの、権利の執行に関するもの、権利の譲渡に関するもの、さては経営におけるナレッジマネジメントに関するもの等々本当に色々あります。

  • 手続に関するもの
  • 権利の執行に関するもの
  • 権利の譲渡に関するもの ………

 その中でも、一般的に弁理士さんにお願いする仕事で一番多いのは「手続き」に関するものだと思います。
特許の手続きについては、日本の特許のみの話しですが、特許出願、審査請求、拒絶理由対応、登録手続き(年金納付)、審判手続き等があります。

特許実務で一番多い「手続き」の種類特許出願審査請求拒絶理由対応登録手続き審判手続き などなど

特許出願、審査請求を経て、審査官からの拒絶理由通知に対応したり、登録査定に対応して設定登録手続をしたり、更には不服審判の請求をしたり…一言に「実務」といっても、案件の進行具合によって様々な手続きをすることになります

これらのうち、難しいものは、①特許出願、③拒絶理由対応、⑤審判手続ではないでしょうか。
実際に特許事務所等でお仕事を始めたとき、まず混乱しやすいのはこれらの手続きで必要な書類の作成や事務作業に関することになるかと思います。

 まずは、特許の実務における総論を説明して、①特許出願のうち「明細書の作成」に的を絞って説明します。

特許実務 ①特許出願 「明細書の作成」について

 ここでは、「明細書の作成」ができるということを「明細書、特許請求の範囲(以下、「クレーム」という)及び図面(以下、すべてを総称して単に「明細書等」という)を書けるようになる」と理解して、以下の3つの段階に分けて説明することとします。

第1段階:特許請求の範囲の記載に合わせて実施例(実施の形態)が書ける段階
第2段階:発明の内容と従来技術とからストーリーを立てることができる段階
第3段階:発明者のインタビューを基にクレームを書くことができる段階
明細書の作成ができるようになるまでの3段階

 最終的には発明者の話を聞き、従来技術と見比べて(本来は更に事業戦略も見据えて)クレームを立てて明細書を作成することができなくてはなりません。
しかし、現実的には一気にそこまで行くのは難しいでしょうから、まずは①実施例(実施の形態)を作成することからスタートします。
次に、②ストーリーを立てられるようになり、最終的に③クレームを任せてもらえるようになる、というステップを踏んで理解するのがいいかなと思います。実際に特許事務所でお仕事をする際のステップアップも、このような段階を踏んでいる場合が多いのではないかと思います。
これは、習得しやすいステップアップの流れでもあると思います。
クレームを立てられるようになるには、出願~権利化又は拒絶までの過程を何度も経験して経験値を増やすことが必要ですし、明細書全体のイメージを描けなければクレームを立てられるようにはなりません。
ですから、いきなりクレームの立て方を学ぶよりはまずはクレームに合わせて実施例を記載することから学ぶべきだと考えて、このような段階を考えてみました。

 では早速第1段階から説明しましょう!と言いたいのですが、その前にまずは条文のおさらいをしたいと思います。単に条文解説をするというのではなく、実務に適した形にもう一度条文知識をリストアップしてみたいと思います。

特許実務 ①特許出願 「明細書の作成」について 最も基本となる条文は?

 一番の基本として、明細書を書く上で最も基本となる条文はどれでしょうか?

 2条か、36条か、といろいろ考えてみましたが、やはり70条ではないかと思います。

第七十条 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
 前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。
 前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。

特許法より

 70条は、言わずと知れた技術的範囲を定めた条文です。
なぜこの条文を基本と考えるのかというと、明細書等を書くときには、まず権利化を図る範囲を定めてクレームを立て、このクレームに基づいて明細書を書いていくからです。
そのため、権利化を図る範囲、換言すると技術的範囲を定める範囲をクレームであると規定している70条を基本条文と考えるのが妥当なのではないかと考えます。

 そして、私は重要な条文を以下のように位置付けたいと思います。

 70条を頂点として、記載要件に関する条文と実態要件に関する要件とを分けて考えています。

 そして、どちらの系統も重要ですが、やはり記載要件の系統、とりわけ36条をしっかりと押さえる必要があります。
36条を押さえていれば、第1段階の実施例の記載は7~8割クリアできるでしょう。

 ストーリーやクレームを立てるためには特許要件を押さえることが非常に重要です。従来技術を見据えたうえで、特許性の主張がしやすいようにストーリーを立て、クレームを立てるようにしなければいけません。

 それでは、次回以降、具体的に各条文を見ていきましょう。なお、特許法逐条解説(以下、「青本」といいます)や審査基準、判例からの抜粋における下線は筆者が付したものです。

特許実務がこれからの方に!おすすめの書籍3選

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