Last Updated on 2022-11-18 by matsuyama
※本記事は2019年に作成したものを加筆・修正したものです。記事内容を大幅に増量してリライトしております。
食欲の秋、読書の秋、芸術の秋、実り多い季節がやってきましたね。今回は芸術に関する話題をご紹介したいと思います。
秋はおいしいものだらけでつい食べ過ぎちゃう。でもスポーツの秋は明日からかな
著作権は、これまで作者の没後50年が保護期間でした。しかし、平成30年にTPP協定が締結されたことを機に、著作権法が改正され没後70年までにその保護期間が延長されました。これにより、さらに長い期間作品を守ることができるようになりました。
ちなみに著作権についてはこちらの記事でも詳しく解説しているので、併せて読んでいただけるとよりわかりやすいかと思います。
著作権=没後70年まで保護 商標権=10年ごとに更新すれば半永久的に保護
突然ですが、「秋田の行事」という絵画をご存知でしょうか?
藤田嗣治が描いたダイナミックな作品で、秋田の四季を代表する行事が描かれています。リンクから絵画と背景を知ることが出来ますので、ぜひ見てみてください。平野政吉美術館という秋田の美術館に所蔵されているようです。
https://www.musey.net/27958(外部サイトへ)
今回この絵画を突然ご紹介したのは、「秋田の行事」という絵画作品の題名が、この作品を所蔵する団体によって商標登録されているためです(商標登録第6186301号)。絵画の題名を商標登録というのもなかなか新鮮だなあと思います。そこで、今回は著作権と商標権という組み合わせで二つの権利の違いの解説と、なぜこの題名が商標登録まで行われたのかについても、メリットを解説しつつ考えていこうと思います。
まず著作権についてですが、絵画作品(著作物ともいいます)を作り出した人には、著作権が自然に発生します。そして、著作権は作者が没してからも70年間は保護され、他者が作品(著作物)を勝手に複製することなどができないようになっています。
この著作権自体は70年で消滅してしまうのですが、今回商標登録を行うことによって、あくまで商標権のみに限られますが半永久的に権利を保護することができるようになりました。
具体的に商標で保護できるものは?著作権と何が違うの?【キーワードは「ブランディング」】
この「秋田の行事」という絵画にまつわる著作権と商標権について、もう少し詳しく解説します。商標権についてみていきましょう。
著作権は前述の通り自然発生する権利ですが、商標権は特許庁への出願手続の後に審査が入り、「登録査定」という通知があって初めて登録することのできる権利です。さらに権利の維持には費用がかかりますが、半永久的にかつ強固にビジネスを支えてくれる権利でもあります。
といっても、この「秋田の行事」を著作権だけでなく商標としても登録することで、具体的にはどんなメリットがあるのでしょうか?どのようにビジネスを支えてくれるのでしょうか。
結論から言いますと、ブランディングができるのです。
権利者の使いたいマークや文字と、権利者の行いたいサービス内容をセットにして「このマーク(文字)とこのサービスを組み合わせて使えるのは商標権を持っている私だけ。もし同じことをしたいのなら、私に許可をとったり、ライセンス料を支払ってください」と主張できるというメリットがあります。差別化に非常に有用な手段なのです。
条文の言葉を使って説明しますと、商標権者は、指定商品又は指定役務(サービス内容のことです)について登録商標の使用をする権利を専有し(商標法25条)、さらに他人によるその類似範囲の使用を排除することができます(商標法37条)。
ビジネス面で商標登録が重要になってくるのも、商標権がサービスを特定して権利化してくれるものだからなんです。ブランディングを行う際にも重要な方法になります
美術作品は作品の展示を行うだけでなく、昨今は作品に関連したグッズの販売や飲食店の併設など、幅広くサービス展開が行われることも少なくありません。刀剣がヒットして様々なサービスに展開していった事例も有名ですよね。
商標権的に見ても、最初は限定的だったサービス内容を、事業の展開に合わせて権利範囲を拡大することも可能です。
今回の事例は、自分たちの持つ財産の価値を高く保護し続けるために、知的財産権が大きな支えになってくれる好例かなと思いご紹介させていただきました。
商標は審査があるものの、登録されると非常に強いビジネスツールになります。ご自身の育てたいブランドや展開したいサービスがある場合は、商標登録についてもぜひ検討してみてください!
より堅実なビジネスを目指す方は、商標のプロである弁理士に相談するのも有効です。商標登録がしたいけどなにをしていいのか、費用の相場がいくらなのか知りたい、という方は本ブログを運営中のスタッフも所属しているアステック特許事務所までお気軽にご連絡ください。