弁理士松山裕一郎の知財情報発信ブログ

キリンビールの「キリンフリー」第1回

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       知財マーケでビジネスUP↑

           ―――  第7号  ―――  

こんにちは、発行者のアステックIP Solutionsの代表、弁理士の松山です。
   
毎回ヒット商品や特徴のあるプロジェクトを取り上げ、現象分析と知財形成のプロセスを各事例、2回にわたって紹介していきます。

今回は、キリンビールの「キリンフリー」第1回です。

これまでのノンアルコール飲料と異なり、アルコール成分0.00%を実現した「キリンフリー」には、消費者から大きな反響が寄せられました。
ビールテイストの飲料として画期的な商品であり、しかも飲酒運転撲滅にも寄与するという社会的な貢献度も高い商品となった「キリンフリー」について紹介します。
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○キリンビール「キリンフリー」(全2週)~第1回~

☆現象と分析   

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■現象と分析   

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(1)現象   

ビールが飲みたいけれど、クルマを運転しなければならない。そんなジレンマを解消するのが、ノンアルコールビールでした。

これまでのノンアルコールビールはわずかながらアルコール成分が残っていましたが、キリンビールが開発した「キリンフリー」はアルコール成分を全く含んでいません。
そのため、飲み心地はビールでありながら、いくら飲んでも全く酔わないというという特徴を備えています。

そんな商品が生まれたきっかけになったのが、2007年夏の飲酒運転の厳罰化でした。

さらに、飲酒運転を規制する流れに合わせるかのように、消費者からアルコールのないビールテイスト飲料を望む声が多く寄せられ、キリンビールが新たな商品開発に踏み切る大きな後押しにもなったのです。

これまでのビールテイスト飲料は、ビールテイストを作り出すために酵母を用いていましたが、酵母を用いるとどうしてもアルコール分が残ってしまします。

そのためアルコール分をゼロにしようと思うと酵母を用いないようにしないといけないわけですが、ビールづくりに欠かせない酵母を使わずにビール独特の風味をつくるというのは、技術的に困難な挑戦でもありました。

アルコールゼロなのにビールのような風味を出すには、どうしたらよいか。

そこで、重要視されたのが、麦汁の製造技術、香味調合技術、酸味制御技術という3つの技術の調和でした。

開発から発売までの2年間で、70~80種の試作品をつくり、社内やモニターへの嗜好調査を重ねるなかで、これらの技術が組み合せられていきました。
新たに開発された「麦芽感のコントロール」「酸味の低減」「香味調整」という3件の技術は特許出願されています。

さらに、安全性の試験を入念に繰り返した上で、2009年4月に「キリンフリー」は発売されました。

発売後わずか1カ月半で、当初の年間販売予定の63万ケースを売り上げ、最終的には400万ケースを売り上げるという大ヒットを記録しました。

その後も、しじみ900個分のオルニチンを配合したり、麦汁の製造過程での植物繊維の使用をやめるなど、商品の工夫・ブラッシュアップが行われています。


(2)分析   

「キリンフリー」が生まれた背景の一つに、メーカーの思いと消費者の思いが重なり合い、商品開発の大きな推進力になったという状況があります。

「飲んでも安心してクルマの運転ができる」「ビールに負けない豊かな味と香りの飲料」といった商品コンセプトは、いずれもメーカーの考えだけでなく、消費者の声が大きな後押しになっていたといえるでしょう。

「乗る」場面でもおいしい飲み物を飲みたいという消費者の声にこたえることで、「アルコール度数0.00%」のおいしいビールテイスト飲料「キリンフリー」は誕生したと言えます。

そして、この消費者の声に自社の技術を最大限駆使して臨んだことにより、さらに「乗る」人から「飲めない」人を顧客として獲得するに至り、ノンアルコール飲料という新たな市場を形成するに至ったと言えます。

また、「キリンフリー」が「飲酒運転の根絶」という点で、社会貢献にもつながる商品になっていることも見逃せません。

元々、飲酒運転の罰則化をきっかけとして商品開発が始まった「キリンフリー」でしたが、「ハンドルキーパー運動」の支援など飲酒運転防止に対する企業姿勢も評価されています。

飲酒運転の根絶という社会的にも大きな注目を集めるテーマに取り組むことで、企業のイメージアップにもつながっているといえ、消費者の社会貢献意欲も満足する商品となっています。

【参考URL】
http://j-net21.smrj.go.jp/develop/foods/entry/2011010501.html(J-NET21:キリンフリー)
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    次回は、キリンフリーの第2回です。
    キリンフリーの先行者利益をサントリーがいかにして追い越したのか?非常に興味深いです。

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         弁理士 松山 裕一郎
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