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―特許実務講座・第1段階より―第4回:USタイプの実施例の書き方(化学・組成物編)

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Last Updated on 2026-01-14 by matsuyama

構造物のように目に見える発明とは異なり、化学・組成物の発明は「見えないもの」を扱うため、実施例の記載にはより繊細で論理的な工夫が求められます。今回は、USタイプのクレームに基づく化学・組成物の実施例の書き方を、3つの代表的なケースに分けて解説します。


目次

1. 新規物質の記載方法

新規物質のクレームでは、明細書に物質の構造・性質・製造方法・用途を明確に記載する必要があります。
新規物質のクレームの書き方は色々あります。
例えば

例えば
①下記化学式 I で表されるイミダゾリン誘導体。
   (具体的な化学式、5位にRを記載し、「式中、Rは炭素数3〜15のハロゲン化アルキル基を示す」と記載)
②5位に炭素数3〜15のハロゲン化アルキル基を有するイミダゾリン誘導体。
等など

これらの他にも機能的な表現を加入して限定要素を少なくする手法もありますが、個人的には、おすすめしません。近年権利化の段階で記載不備を指摘されがちですし、権利化後にも不要の争いに巻き込まれる可能性があると思うからです。

①又は②のいずれにも通じる、記載すべき要素を挙げます。

  • 構造式の説明(置換基の具体例)
  • 数値範囲の臨界意義(なぜその範囲なのか)
  • 製造方法(反応条件・手順)
  • 利用分野(用途例)
  • 分析データ(特定性の裏付け)

例としては以下のような感じになります。

(構造の説明)構造式 I 中のRとしては、次のものが挙げられる。……

炭素数が3未満であると、……、15を超えると……

(具体例)本化合物としては、具体的には以下の化合物が挙げられる。……

(用途)本化合物は、耐熱性プラスチックの原料として有用である。
(製造方法)製造は、AとBを反応させ、Cを添加して得られる。


2. 用途発明の記載方法

用途発明では、有効成分の説明に加えて、最低有効濃度や剤形、使用方法の記載が重要です。

記載すべき要素:

  • 有効成分の構造と具体例
  • 他の成分との混合例
  • 最低有効濃度(効果が出る下限、もちろん上限も記載)
  • 剤形(液体、粉末、スプレーなど)
  • 使用方法(対象・方法・頻度)
  • 効果(実施例で具体的に立証)

例:

本殺虫剤は、フェニル化合物を有効成分とし、全体中50%以上含有することが好ましい。
他の成分として界面活性剤や溶媒を添加可能である。
スプレー剤として植物に散布することで効果を発揮する。


3. 組成物の記載方法

複数の成分からなる組成物では、各成分の機能・具体例・配合量・使用方法を記載します。

記載すべき要素:

  • 各成分の説明(上位→中位→下位概念)
  • 配合量(量比、%表示)
  • 他の成分の追加可能性
  • 使用方法(塗布、混合、加熱など)

例:

A成分:接着性を高めるための樹脂(例:ポリウレタン)
B成分:硬化剤(例:イソシアネート)
C成分:溶媒(例:トルエン)
A:B:C=100:30:80(重量比)で混合し、塗布後30分で硬化する。


実務上の注意点

  • とにかく化学分野は、実施例(具体的なが重要です。数値範囲には必ず臨界意義を記載する
  • 実施例はできるだけ多く挙げる(特に置換基が複数ある場合)
  • 市販品を使う場合は商品名やメーカー名も記載可能
  • 日本の審査では「後出し」が認められないため、出願時に網羅する

まとめ

化学・組成物の実施例では、「構造・製法・用途・量比・効果」を論理的かつ具体的に記載することが求められます。目に見えない発明だからこそ、文章での説得力が重要です。次回は、USタイプの実施例の書き方(方法編)を解説します。プロセス系発明の記載ポイントを押さえていきましょう。


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この記事を書いた人

特許事務所での実務を活かして、知的財産にまつわるあれこれをご紹介していきます。

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