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―特許実務講座・第1段階―第7回:【化学特許実務】マーカッシュタイプの実施例作成ガイド|基本構成と5つの必須要素

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マーカッシュタイプは、化学分野で頻繁に用いられるクレーム形式です。
複数の選択肢からなる「群」を規定して、その中から1種以上を選択することが特徴となる旨の構成をとります。
今回は、このマーカッシュタイプに対応した明細書の書き方を、実務的な視点で整理します。


目次

マーカッシュタイプとは?

マーカッシュタイプは、以下のような形式で記載されます:

基本形:
A、BおよびCを具備し、
Aが、a、b、c、dおよびそれらの混合物からなる群より選択される1種以上のYであるX。

具体例:
充填剤、バインダおよび溶剤を具備し、
上記充填剤が、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化亜鉛およびそれらの混合物からなる群より選択される1種以上の金属酸化物である塗料組成物。

このように、構成要素Aが複数の選択肢からなる群の中から選ばれることを示します。


明細書に記載すべき要素

マーカッシュタイプの明細書では、以下の要素を意識して記載します:

  • 群の構成要素の具体例(a〜dの説明)
  • 各選択肢に対応する具体的な実施例
  • 可能であれば混合物の実施例も記載
  • 製造方法(反応条件・手順)
  • 使用方法・用途例
  • 分析データ(特定性の裏付け)

具体例:フェニル化合物のクレーム

クレーム例:
R-C₆H₆ で表されるフェニル化合物において、
Rが、メチル基、エチル基、プロピル基、フッ素原子、塩素原子及びこれらを組み合わせた置換基からなる群より選択される1種以上である化合物。

実施例の構成:

① 群の構成要素の説明
Rとして用いられる置換基は、炭素数1〜3のアルキル基(メチル、エチル、プロピル)およびハロゲン原子(フッ素、塩素)である。
これらは反応性や物性が異なるため、用途に応じて選択される。

② 各選択肢の具体例

  • メチル基を有する化合物:CH₃-C₆H₆
  • フッ素原子を有する化合物:F-C₆H₆
  • メチルと塩素との組み合わせの化合物:CHCl-C₆H₆

③ 製造方法
各化合物は、対応するフェニル基に対して置換反応を行うことで得られる。
たとえば、塩素化には塩素ガスを用い、反応温度は40〜60℃、反応時間は30分程度とする。

④ 使用方法・用途例
得られた化合物は、接着剤の原料、殺虫剤の有効成分、耐熱性樹脂の添加剤などとして利用可能。

⑤ 分析データ
各化合物について、NMR、IR、GC-MSなどの分析結果を記載し、構造の特定性を裏付ける。


実務上の注意点

  • 群の構成要素は網羅的に記載する(漏れがあると権利範囲が狭まる)
  • 実施例はできるだけ多く挙げる(全てについて実施例は必須と考えるべし)
  • 混合物の例も忘れずに(群の「混合物」もクレームに含まれる)
  • 数値範囲がある場合は臨界意義を記載する
  • 日本の審査では「後出し」が認められないため、出願時に実施例を網羅する

まとめ

マーカッシュタイプの実施例では、「群の構成要素の具体化」と「網羅的な実施例の提示」が重要です。化学分野では、目に見えない構造を文章で明確に伝える必要があるため、論理的かつ丁寧な記載が求められます。

次回は、パラメータ型の実施例の書き方を解説します。物性値によって発明を特定する場合の記載ポイントを整理していきましょう。


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この記事を書いた人

特許事務所での実務を活かして、知的財産にまつわるあれこれをご紹介していきます。

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