方法クレームは、発明の「手順」や「工程」を対象とするものであり、構造物や組成物とは異なる視点で記載する必要があります。今回は、USタイプの方法クレームに対する実施例の書き方を、実務的な観点から解説します。
方法クレームの特徴
方法クレームは、ある目的を達成するための処理手順や操作工程を記載するものです。たとえば「Aを加熱し、Bを混合し、Cを反応させる方法」といった具合です。
重要なのは、時間経過が請求項に入っている点です。Aを行い、Bを行う、といった具合に動詞をつなげることで文章を作っています。このように動詞をつなげて文が成り立っていることで全体として作業の順番が提示されていることになります。
といいつつ、更に注意するべき点は、順序が必然である場合と、順序が必然でない場合とがある点です。順序が必然でない場合は、請求項に不要な限定を入れない方がいいので、そこをぼかして請求項を作ることが多いことです。
また、日本語の特性から各節の最後を名詞にしたほうが文章を書きやすいことも注意すべき点です。
基本形を見て考えていきましょう。
基本形1:
…を反応させ、反応物を沈殿させ、更に沈殿物を電気分解するに際して、
上記反応を行う際の反応温度を…とし、上記沈殿を行う際に添加物として…を添加し、上記電気分解における電圧が…である廃液の処理方法。
基本形2:
反応工程、沈殿工程および電気分解工程を含み、
上記反応工程における反応温度が…であり、上記沈殿工程において…を添加物として添加し、上記電気分解工程における電圧が…である廃液の処理方法。
いかがでしょうか?
基本形2の方が書きやすそうに感じませんか?
このように記載することで各工程間の時系列関係をぼかすことが多いです。
日本語の問題としても工程という名詞で節が終わるので、後の文節で主語を立てやすいという点で書きやすさもあります。英語にもしやすいので、これらの点から基本形2の方が指示されているように感じます(統計を取っていないので体感です)。
さて、このような方法の請求項において、明細書には、各工程の順序(順不同の場合も含めて)・条件・目的を明確に記載することが求められ、方法によって得られる物や現状等も記載する必要があります。
実施例に記載すべき要素
方法クレームに対応する実施例では、以下の要素を網羅することが重要です:
- 各工程の具体的な手順
- 使用する材料・装置・条件(温度、時間、圧力など)
- 工程ごとの目的や効果
- 全体の流れと方法の結果(作用効果)
- 具体的な実施例で実施可能性(誰でも実施できるように)
更に物の製造方法の場合には、最終生成物を物の発明の場合と同様に記載しておく必要があります。
具体例:塗料製造方法
以下は、塗料を製造する方法クレームの一例です:
A成分を加熱し、B成分を徐々に添加しながら撹拌し、C成分を加えて反応させることにより、塗料を得る塗料の製造方法。
このクレームに対応する実施例は、以下のように構成できます:
① 工程の説明
A成分(例:アクリル樹脂)100gを80℃に加熱し、B成分(例:硬化剤)30gを10分かけて徐々に添加しながら撹拌する。
撹拌速度は毎分300回転とし、均一になるまで混合する。
その後、C成分(例:溶媒)80gを加え、30分間反応させる。
② 条件の記載
反応温度:80℃
反応時間:30分
撹拌速度:300rpm
③ 得られる物の説明と効果の記載
得られた塗料の組成など物を特定できるためように記載(物性も含む)
効果:「硬化性・耐水性に優れ、金属表面への密着性が高い。」等
実務上の注意点
- 工程の順序は必ず記載する(順序が異なると結果が変わる可能性あり、順不同ならその点も記載)
- 条件は数値で明示する(「適温」などの曖昧な表現は避ける)
- 使用する材料は具体的に(市販品の場合は商品名も可)
- 効果は工程との因果関係を示すように記載する
- 再現性のある記載を心がける(第三者が読んで実施できるレベル)
まとめ
方法クレームの実施例では、「工程の順序・条件・目的・効果」を明確に記載することが重要です。USタイプの形式に沿って、論理的かつ具体的に記述することで、審査官や第三者にとって理解しやすく、説得力のある明細書になります。
次回は、ジェプソンタイプの実施例の書き方を解説します。既知技術との違いをどう際立たせるかがポイントになります。


