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―特許実務講座・第1段階―第8回:パラメータ型特許の書き方|「明確性要件」をクリアし、従来技術と差別化する実施例のコツ

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パラメータ型は、物の構造で特定することが困難な場合に、物性値などの「特性」で発明を定義するクレーム形式です。
特に化学分野で多く使われます。
化学製品は目に見えない部分が技術的な特徴で、しかも原料成分はわかっていても出来上がったものが分析してもきちんと規定できないことも多いので、パラメータで物を規定することが認められています。
ただ、化学以外にもパラメータの考え方は波及すると、私は思います。
特にソフトウェア関連発明では、機能で請求項の要件を規定することが多く、しきい値を用いて特徴を規定することが多いです。これらの発明では、パラメータに似た考え方や権利解釈の方法が発展すると思います。そして、この考え方は動きの制御に通じるものがあります。

今回は、このパラメータ型に対応した明細書の書き方を、実務的な視点で整理します。


目次

パラメータ型とは?

基本形A:
A、BおよびCを具備してなり、
aが10〜20の範囲内であり、bが20〜30の範囲内であるX。

このように、最終的な物の物性値(例:粘度、硬度、各種係数など)を数値で規定することで、発明を特定します。

基本形B:
A、BおよびCを具備してなり、
Aのaが10〜20の範囲内であり、Bのbが20〜30の範囲内であるX。

このように、各構成要素の物性値(例:粘度、硬度、各種係数など)を数値で規定することで、発明を特定する場合も該当すると言えます。


実施例に記載すべき要素

パラメータ型の実施例では、以下の要素を意識して記載します:

  • パラメータの定義(何を測定しているか)
  • 測定方法(装置、条件、基準)
  • 数値範囲の臨界意義(なぜその範囲なのか)
  • パラメータで表す以外にないこと
  • 製造方法(パラエータを満たす条件、従来の方法とは異なるポイント)
  • 実施例(範囲内・範囲外の比較例)
  • 使用方法・効果(パラメータによる性能)

具体例:粘度で定義された塗料

クレーム例:
A、BおよびCを具備してなり、
粘度が100〜300mPa·sの範囲内である塗料。

明細書記載の構成:

① パラメータの定義と測定方法ー具体的に記載します。
粘度は、25℃においてB型粘度計を用いて測定する。
測定条件は回転数60rpm、測定時間30秒とする。

② 数値範囲の臨界意義
粘度が100mPa·s未満では塗布性が低下し、300mPa·sを超えるとスプレー性が悪化する。
したがって、100〜300mPa·sの範囲が最適である。
→最終生成物(発明の対象物)を分析などしても成分の特定ができないことを記載しておくべき!

③ 実施例と比較例

  • 実施例1:粘度150mPa·s → 良好な塗布性と乾燥性
  • 実施例2:粘度280mPa·s → 高い密着性
  • 比較例:粘度80mPa·s → 塗布ムラが発生
  • 比較例:粘度350mPa·s → スプレー不良

④ 製造方法
A成分(樹脂)とB成分(溶媒)を混合し、撹拌速度と温度を調整することで粘度を制御する。
→実施例などに従来の製造方法と異なるポイントを入れておきましょう。それがないと、「従来の製造方法と同じなので従来はこの物性を測っていないだけで同じものができていたと認められる」との理屈が成立してしまいます。

⑤ 使用方法と効果
得られた塗料は、金属表面にスプレー塗布することで、均一な膜厚と高い耐久性を実現する。


実務上の注意点

  • 測定方法は必ず記載する(装置・条件・基準)
  • 物性でないと物を規定できないことを記載しておく
  • 数値範囲には臨界意義を明示する(なぜその範囲が必要か)
  • 実施例は範囲内と範囲外の両方を記載する(比較が重要)
  • 製造条件が従来と異なるポイントを記載しておく
  • 効果はパラメータとの因果関係を示すように記載する(物性から必然の効果だけでは進歩性を満たさない場合が多いので、物性からは直接導かれない効果をうたう必要がある)

まとめ

パラメータ型の実施例では、「測定方法の明示」と「数値範囲の臨界意義」そして「製造方法」が特に重要です。
物性値で発明を定義する以上、その値が従来にない意味を持つことを論理的に説明する必要があります。

次回は、プロダクト・バイ・プロセス型の実施例の書き方を解説します。製法で物を定義する場合の記載ポイントを整理していきましょう。


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この記事を書いた人

特許事務所での実務を活かして、知的財産にまつわるあれこれをご紹介していきます。

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