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―特許実務講座・第1段階―第10回:機能的クレームの書き方|「発明未完成」を回避し、実施可能要件を満たす具体的構成の提示法

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機能的クレームは、物の構造ではなく「動作」や「作用」によって発明を定義する形式です。
特に機械系や制御系の発明で多く使われます。
今回は、この機能的クレームに対応した明細書の書き方を、実務的な視点で整理します。


目次

機能的クレームとは?

基本形:
A、BおよびCからなるXであって、
左右方向に傾けた場合に上方に跳ね上がるように構成されたX。

このように、構成要素の「機能」や「動作」によって発明を特定します。

具体的には、こんな感じです。
丸みのある底部を有する、中空な容器本体を具備し、
上記容器本体に力をかけて傾け、当該力を解除した場合に自然に元の状態に復元するように構成されたカップ。


実施例に記載すべき要素

機能的クレームの実施例では、以下の要素を意識して記載します:

  • 各構成要素の具体的な形状・材質・配置
  • 機能を実現する構造の説明
  • 動作の流れ(どのように動くか)
  • 機能によって得られる効果
  • 使用方法(操作手順など)

具体例:搬送装置のクレーム

クレーム例:
搬送部、駆動部および昇降部からなり、
搬送部が物品を左方向に移送する際、昇降部が物品を上方に持ち上げるように構成された搬送装置。

実施例の構成:

① 構成要素の説明
搬送部は、ベルトコンベアで構成され、左方向への移送が可能。
駆動部はモーターで構成され、搬送部を駆動する。
昇降部はリンク機構とシリンダーで構成され、物品を上下に移動させる。

② 機能を実現する構造
昇降部は、搬送部の下方に配置され、物品が搬送部上を移動する際、センサーが物品を検知し、シリンダーが作動して昇降動作を行う。
リンク機構により、物品は安定した姿勢で上方に持ち上げられる。

③ 動作の流れ

  1. 物品が搬送部に載る
  2. 駆動部により左方向へ移送
  3. センサーが物品を検知
  4. 昇降部が作動し、物品を上方に持ち上げる

④ 効果の記載
この構成により、物品の移送と昇降を連動して行うことができ、搬送効率が向上する。
また、物品の姿勢が安定するため、破損やズレが防止される。

⑤ 使用方法
操作パネルにより搬送速度や昇降タイミングを設定可能。
自動ラインに組み込むことで、無人搬送が可能となる。


実務上の注意点

  • 機能を実現する構造を具体的に記載する(単なる動作説明では不十分)
  • 動作の流れをステップごとに記載する
  • 効果は機能との因果関係を明示する
  • 使用方法は操作性や応用可能性を含めて記載する
  • 図面がある場合は、動作と構造の関係を視覚的に補足する

特に重要なのは、①機能を実現する具体的な構成と②効果の記載です。

① 機能によって物を規定するというのは一種パラメータと同じで、「こうならいいな」という物の目的を書いているに過ぎないと言えます。
請求項に目的を記載していると認定されるということは、発明の具体的な構成が特定されていないことになるので発明未完成ということになります。
なぜか? 考えてみてください。どこでもドア、あったらいいですよね。でも、じゃあどんな構成なの?と聞かれて答えられる人はいないですよね?未だ実現されていない原理を並べてなら可能かもしれませんが、実現できるものとしては無理でしょう。
そういうことです。機能的に記載するというのはそういうことですから、機能を達成する具体的な構成を記載しておかないと特許にならなくなります。

② 機能を発明の構成に入れていますので、効果は機能そのものではだめということになります。
パラメータと同じで、機能だけではダメということです。したがって、機能以外の効果を謳う必要があります。

まとめ

機能的クレームの実施例では、「機能を発揮する構造」と「動作の流れ」を明確に記載することが重要です。
機能的クレームは構成が抽象的であるため、具体的な構造と動作とそれにより発揮される機能との関係性を丁寧に描写することで、発明の有用性と実施可能性を伝えることができます。

そして、昨日とは異なる効果を記載することが重要です。

次回は、第1段階の総まとめとして、各クレーム型に応じた実施例記載のポイントを整理し、実務に活かすためのチェックリストを紹介します。


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この記事を書いた人

特許事務所での実務を活かして、知的財産にまつわるあれこれをご紹介していきます。

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