ガリガリ君No.5

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こんにちは、
弁理士松山裕一郎です。
今回は「ガリガリ君」の第5回目です。

(2)知財の活用
 ネーミングやパッケージデザインも知財ですから、これらも創出されたものであることは間違いないのですが、ここでは技術面の知財を如何に商品という形で活用するか、を考えてネーミングとパッケージデザインとを考えたというスタンスで、技術的な知財の活用を考えてみたいと思います。
 まず、ネーミングですが、「ガリガリ君®」というネーミングは、かなりすごいです。
 かき氷というイメージを大事にするなら「ガリガリ」という音は使わないでしょう。
どちらかというとシャリシャリ、サクサクの方が適しているのではないでしょうか?その意味ではかき氷というもののイメージは無視、というか壊していると言えます。
 しかし、商品イメージにはぴったりです。食べてみると、まさに「ガリガリ」ですね。
 こう聞くとなんてことなく聞こえるかもしれませんが、実際にこのネーミングを出すのは通常の企業なら至難の業でしょう。それは、「ガリガリ君®」の前に販売していた「赤城しぐれ」というかき氷商品に引っ張られるのが普通だからです。名前自体はすぐに決まったのかもしれません(どの程度の時間をかけたかは不明)が、非常に柔軟な思考をしたと言えるのではないでしょうか?
 
次に、パッケージデザインです。
 パッケージデザインも異色です。独特なキャラクターを作り上げています。
最初は女性には不評だったようですが、2000年にCGを駆使したデザインにしてからは女性にも受け入れられ、現在は30代を中心とした大人層にも受けています。しかし、基本的なキャラクターは同じです。
 このような一見受けが悪そうに見えるキャラクターを用いてデザインを行うのは、かなり冒険に見えます。販売前から現在のようにかなりの本数が出るとは考えていなかったと思いますが、ホームランバー®と対比してもかなり異色なデザインなことはわかります。

 斬新なネーミングとパッケージデザインでガリガリ君の商品は完成しています。すなわち、技術面の新知識により達成した商品コンセプトを、消費者に伝わるようにしたのが、この斬新なネーミングとパッケージデザインなのです。
 この点、少し掘り下げてみましょう。
 普通の感覚で言えば、かき氷を串刺しにしようとは思わないでしょう。別にアイスキャンディーで事足りるわけですから。しかし、この会社ではあのかき氷のシャクシャクした感じを手軽にあるきながら遊びながら楽しんでもらいたい、と考え、その思いを達成するために、かき氷をアイスキャンディーでくるむという斬新な商品構成を考え実現したのです。そうしたら「かき氷棒」のような単純な名前にしたのでは、商品のコンセプトを消費者に伝えることができませんし、もはやこの商品は既存の食品の言葉をそのままあてはめられる形態のものではなくなっています。そうすると、この商品コンセプトとそれを達成した新しい技術面の知識を大いにビジネスで活用するためには、商品コンセプトを伝えやすい「言葉」と「商品イメージデザイン」を当てはめる必要があったと言えます。
 この会社がその点に気付いていたのかどうかはわかりませんが、これはブランディングを行う場合の常套手段と言えるようなことです。商品のコンセプトや商品そのものが従来のものとは少し違うぞ、と感じるときに、従来品と同じような名前を付けても違いが伝わらないし、あまり突拍子もない名前を付けてもコンセプトが伝わりません。
その意味では、シャクシャクではなく、「ガリガリ」と元気にかじっている音、いかにも腕白そうで元気のよさそうな少年をメインにしたパッケージデザイン、そして「君」付けし、擬人化したことによる親近感、これらをもって商品コンセプトを消費者にわかりやすく伝えているのです。
 商品そのものについての知財を大いに活用する新知識だと言えるのです。

(3)知財の維持
 このような知財の維持は如何に行われるべきでしょうか?
商品そのものは、特許で保護した方がいいですし、製造方法に関する部分は特許をとってもいいですが、ブラックボックスを作るべきでしょう。装置や作り方、全てを秘密にすることも効果的なケースかもしれません。まあ、ネーミングやパッケージデザインは商標で保護することができます。

しかし、最も重要なことは、「ガリガリ君®」の商品コンセプトが、「遊び心」から発せられたものである以上、この「遊び心」を如何にして維持するか、が最も重要な維持活動になると言えます。
この会社の場合、「遊び心」が脈々と受け継がれているように感じます。最近では味の面で遊び心を発揮しています。また、斬新な商品となるように、新しいことを提案してくるのではないか、そんな期待を持たせてくれます。そう消費者に感じてもらうことが、この「ガリガリ君®」という知財の維持にもっとも重要なことだと思います。

ではでは

【参考URL】
http://www.akagi.com/company/index.html (赤城乳業HP 「会社案内」)
http://j-net21.smrj.go.jp/develop/foods/entry/2010122201.html (JNET21 あの商品はこうして開発された!「ガリガリ君」)

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